一絵画の絵画全体の価値と絵柄の価値とは別のものです。絵画作品の現実社会での価値は絵で決まるものではありません。絵は口実という場合の方が実際には多いのです。作品の真贋、成立事情、所有者の来歴、歴史的価値、論述論文の多少、工芸的意匠の卓越、制作の密度、堅牢性、次代への影響、コレクターの性格や一般への周知、話題性、投資価値、装飾性と絵以外の要素を挙げたらきりがありません。例えばレオナルド・ダ・ヴィンチの「モナリザ」ですと、この絵を手本としたり、模倣したり、絵をそのまま利用した作品はラファエロやコローをはじめとして猫のモナリザや髭のモナリザに至るまで数多くあります。絵画の要素の中での絵の部分はほとんど同じです。もちろんレオナルドの手になるスフマートを完璧に再現した作品はないと主張する識者がいるかもしれませんんが、スフマートに絵のすべての価値があるのでもありません。本当のところはモナリザの斜めに構えたその人物像の構図に絵としての価値があるのです。しかしそれは「モナリザ」を模倣したすべての絵画に共通です。絵の価値を世俗の金銭の価値に置き換えることはできません。絵の価値は絵を描く人にとってのみ理解できるのです。そのフォルムの的確さ、美しさ、普遍性を示したものだからです。
by カネダオサム
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