古本街以外では美術全集という西洋絵画のお手本集のような本が見られなくなりました。普通の街の本屋に行っても昔のように名画を目にすることはなくなりました。現代の絵画の冒険に寄与した画家たちの作品は目にすることがあるのですが、それらは政治的歴史的な意味での名画で、普遍的な意味での名画ではないでしょう。各時代、各地方が生み出したその時代を超え、地方を超えて到達した普遍的な価値を再生産可能な名画として身近に備えておくことで豊かさを共有できた価値観がありました。宗教の時代がさり、王侯貴族の時代がさり、理性の時代までもが過ぎ去ってしまい、名画と言われた絵画が伝えていた豪奢と逸楽と輝きとが、見返すことが悪であるかのような、意味のない過去のものとなりました。それに変わる現代はすべて数字と金です。輝きも数字で、貧しさも数字です。オークションの高値が現代の名画の証明ですし、発行部数が名作の証明です。あらゆる項目がリスト化され、逐次現代の価値を決めてゆきます。数字には過去の名画のように共有できる豊かさはありません。懐かしい神田の古本街を歩きながら、秋の深まりを身にしみて感じます。





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by カネダオサム


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